子どもを産む前、私は、子育てのリアルな実情をまったく知りませんでした。
まわりの友だちに子どもがいなかったし、
育児書もいいとこしか見てなかった。
産まれた直後から赤ちゃんはにこにこしてくれて、
「こんにちは、私がママよ」
「ウフフ」
「アハハ」
ってふつうになると思ってました。
このことを思い出すと、妊婦時代の自分の耳もとで「バカ」「目をさませ」と騒ぎたくなるのですが、出産後1カ月でバカのツケはじゅうぶん払ったので、もうヨシ。(赤ちゃんが目を開けて笑うようになるのは、当然、2〜3カ月から!)
今は、まわりに子どもやママ友さんも増えました。
でも、あいかわらず手探りです。
とはいえ6歳になると物わかりもいいし、言葉で伝え合えるので、試行錯誤はグッと減ってきました。
だがしかし。
昨日、こんなことがありました。
わが家のミルティンくんことS志は、ごはんの時間になっても、なかなか遊ぶのをやめられない。すぐ片づける日も多いけど、ブーたれることもよくあります。
昨日もごはんができたので呼ぶと、
「S志はいま、そういうきぶんじゃないの」
「もうごはんだから、レゴはそのあとやりなよ」
「どうして、こどもにむりやりやらせるの? おとななのに、こどもにそんないじわるだめでしょ!」
近ごろ、ああ言えばこう言う。
何か妙に言い返しにくいこと言う。
※本日、S志の親友チビクマちゃんによる再現映像でお送りしております(険悪ムードやわらげ効果)
まずは、がんばって子どもの目線に合わせて説明してみる。「なぜいけないか」をわからせるのが大事らしいですからね、うむ。
「ごはんは、あったかいうちにゆっくり食べないとおなかが痛くなるんだよ」
「なんで?」
「……」
「なんでおなかいたくなるの?」
「えっと、食べものは胃腸で消化されるんだけど、胃腸っていうのは、お腹のなかで食べものを溶かして栄養にしてくれるところで、溶かすのを消化っていって、で、冷たいものって消化に悪いのね。で、咀嚼っていうのも大切でだな……」
「なにいってるかわかんない!!」
逆に怒られた!
こんなとき、池上彰さん並みの知識と情報伝達能力があれば……。いや待て。反省はあとでやろう。よーし、次の作戦はこれだ。
「S志が好きっていってたごはん一生懸命つくったのに、悲しいなー」
よし言えたぞ。イライラせずに言えたぞ。
これ、以前「夫婦げんかのコツ」みたいなので読んだのですが、「○○すべきでない」と一般論で責めるより、「○○されると悲しい」と自分の言葉で伝えるといいらしい。夫ともささいなことでよくケンカするんですけど(台フキン置く位置など)、確かにいいたいことが整理できて、話がこじれにくい。頭にきてると言いたくなくなりますけど。エイヤッと口にする勇気がキモ。
S志にもこういうふうに言うと、少し想像力がはたらくのか落ち着くことが多いのです。
でも、この日は違いました。
「こんなの、S志のすきなごはんじゃない」
ぐずりたい気分だったのか。もうちょっと言ってもいいと思ったのか。
なんにしろ、この未踏のひと言で、私はイライラ通りこして、カチーンときちゃいました。
「あっそう、じゃあもう食べなくていい」
「怒るよ」は言っても本気で怒ることはめったにないので、
自分が怒ってるってことにまずびっくりして(超小心者だから)、
ひとりでごはんを食べ始めることにしました。
「もう食べなくていい」発言を受けたあとのS志
(心情までははかりかねます)
S志が(おそらく怒りで)クークーうなっているのをBGMにポトフのじゃがいも食べながら、ため息。
叱るのって難しいな。
「最近、親が叱らなくなった」。年配の方からそんな声を聞くことが多い。
いっぽう「頭ごなしの叱り方は心を閉ざす」なんて話もテレビや本でよく見る。
叱りすぎと甘やかしのボーダーラインって、どこにあるのだろう?
頭に、向田邦子の「寺内貫太郎一家」が浮かびました。
オヤジがガンコで、しょっちゅう息子の周平とちゃぶ台ひっくり返して大げんか。
あれもひとつの家族の姿なんだろうなあ。
ますますこんがらがってきたそこへ、
「うー!うー!」と地団駄ふみふみ、S志がやってきました。
「ママなんか!」
涙目でぶるぶるしています。
なにか決定的なこと言おうとしてる匂いがプンプンします。「おふくろに何がわかんだよ!」的な匂いが(個人の感想)。
すわっ、次のセリフいかんでは、本気でぶつかり合うしかないやも!
ポトフのいもをゴクリと飲みこみました。
「ママなんか、
もう、いっしょにおふろはいってあげないっ!
ずーっと、いっしょにはいってあげないっ」
……
……はっ
もしかしてこれが、S志からの私への精いっぱいの制裁……
今の(ためたわりにめちゃくちゃ小さい規模の)決別宣言が……!!
そうか……子どもなんだ…!
まだまだ、子どもなんだなー(考えてみたら当たり前ですが)。
イライラがしゅるしゅる消えてしまいました。
子どもに、大人のものさしを持ち出してた気がしました。
S志も決定的発言(?)を放ったことで後ろめたくなったのか、「なかなおりする」と言い出して、ようやく夕ごはん。そのあと「ごはんの時間はちゃんと食べる」に頷きました。やれやれ。
ぶるぶる言い返されたのはじめてでしたが、これからきっと本格的な口げんかも多くなるんでしょうね。
叱り方、まだまだ手探りです。
「こういうふうにしたらいいよ」というアドバイスあったら、ぜひぜひお聞きしたいですー!
この段階でも「おなら!」(幼児必殺下ネタ)と
叫べば一瞬でS志を爆笑までもってけるんですけども、
それは、やっちゃおしまいかなと