• 保育園から帰ってきて流しでお米をといでいると、
    わが家のミルティンくんことS志が、キッチンカウンターから「ママにおはなししたいことあるの」とのぞきこんできました。
    かしこまってどうしたのかな。聞いてみると、

    「アルプスいちまんじゃく、しってる?」

    おお!
    S志もいよいよこの日を迎えたのか。
    私は感慨深い気持ちになりました。

     

    というのも、アルプス一万尺。
    日本を代表する手遊びといってもいいのではないでしょうかこれ。
    私が小学生のころも、友だちのあいだでかなり流行していて、毎日やってた時期がありました。
    みんな「いかに速く連続でできるか」に懸けていて、
    休み時間になると、必ずどこかの机で勝ち抜き戦が始まりました。
    トチったら負け、で、次の人の番。
    全盛期には、1回につき何秒でできるかというタイム争いにも発展し、
    私はクラスでもっとも速くアルプス一万尺ができる高速コンビになったこともあります。まぶしい感じの要素がとくにない私にとっては、クラスから喝采を浴びた唯一といってもいい思い出です。ウフフ。どうでもいいネ。

    どうやら、まさに今、S志の保育園でも流行り始めたようなのですね。
    21世紀にもしっかり生き残っているのだなと感心してしまいました。

     

    さて、アルプス一万尺といえば、
    誰もが通る道であり、
    誰もがコケる落とし穴がありますよね。
    そうそう、あれです。

    「こやり」

    です。

    こやりの上でアルペン踊り。
    たいがいの人は、これの正体をカン違いしたことがあるのではないでしょうか。

    私のまわりで圧倒的に多いパターンは、
    これです。

     

     

    つまり、こうですね。

     

    かわいそう……(ミルコップちゃんだとかわいいけど)。
    私の姉はこのパターンでして、中学生まで「子ヤギ」と歌ってました。
    それで姉妹ケンカもしました。
    私は、ちゃんと「小槍」だと思っていたからです。

    この、小槍だと。

     

     

    死と隣り合わせの、すごい修業なんだ! アルペン踊り!
    恥ずかしいことに私も中学生までカン違ってました。

    またある友だちは、「小屋」って言ってましたね。
    音数がひとつ足りなくなるんですが
    かたくなに「こーや」って歌ってて若干イラっとしました(中学生だから許してください)。

    皆さんは、どうでしたか?

     

    中学生のときに、テレビか雑誌で特集されていたんでしょうか、
    これは日本のアルプス登山を歌った歌で、
    「小槍」というのは北アルプスの槍ヶ岳に連なる小さな岩山のことなんだと、学校で話題になったのでした。
    しかしこの槍ヶ岳。大学時代に実際にのぼったのですが、山頂は20人もいたらギュウ詰めになるような面積しかありません。岩壁から垂れるクサリをよじ登っていたら、山頂からオジサンたちの「まだ上がってくんな!こっちが落ちる!」という絶叫が聞こえてビビった記憶があります。
    それくらい、槍の上は狭くてキケンなのです。
    小槍はそれよりはるかに狭く、もはや人が立つ場所にあらず。小槍の上で踊ってる人を見たら、泡ふいて山岳救助隊に通報するレベル。
    「死と隣り合わせのすごい修業」という私のイメージは、あながち間違ってなかったのではないか。

     

    はっ。横道それすぎました。
    そんな思い入れがあるので、S志もアルプス一万尺に参戦したことがわかった今、
    彼がどのパターンで落とし穴に落ちるのかがまず気になりました。

    「ママ、ここにしゃがんで」

    「はい、やろうやろう」

    「いくよ、せーの」

     

    あるぷすいちまんじゃく

    こやしのうえで

    あるぺんおどりを

    さあおどりましょう

     

    ……

     

    こやし

     

    あ、小ヤシかな……??
    「こやしって何」と聞いてみました。
    S志は、まっすぐな目で話し始めました。

    「かにがあるひ……」

     

    かにがあるひ はまべをあるいていたら
    かきのたねが おちておった。
    かには それをひろうてもどって
    いえのにわにまいた。
    かには まいにちまいにち みずをやったり
    こやしをやったりしては
    はよう めをだせ かきのたね とうたった。

     

    それは去年おばあちゃんに買ってもらった、
    『かにむかし』という絵本の一節。
    S志はこの本でひらがなを覚えました。

    「あのね、うんちとかをつちにまくやつ」
    (パパに教えてもらったらしい)

     

    彼がアルペン踊りを踊るところ。それは

    肥やしの上

     

    ある意味、小槍より修業レベルが高くなりましたね。
    このまま中学生あたりまで放置してみようと思います。

レシピ一覧
3月 モー子の桜色ミルクカフェ
2月 ミルコリー野のチーズdeショコラ
1月 ばあちゃんのぽかぽかミルク手当て
12月 サン太のミルククリスマス
11月 イモ子とクリ男のミルクキッチン
10月 ボンジョル野のミルクイタリアン
9月 マイクさんのミルクブランチ
8月 ケンちゃんの夏やすみるくアイス
7月 マサラ田さんの夏カレーセット
6月 コバヤシさんのミルク御膳
5月 陳さんのミルク中華
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