• ミルティンくん、牛になる

    こんにちは、M子です。
    先週は、立川談志さん逝去で一時テレビは持ちきりでしたね。
    わが家のミルティンくんことS志はニュースが好きで(救急車とかがよく映るという理由)、いつもわりかしまじめに見ています。
    その日も談志さん逝去のニュースを見ていたS志が、ガバッと立ち上がり、夕ごはんをつくっていた私のところにやってきました。
    なにやら真剣な顔。私の耳に口を近づけて、

    「あのね、あのね、あのひとさ……らくのうかさんだったんだって!」

    だ、談志が酪農家!!
    なんと落語と両立していたのか!
    しかし冷静になってテレビを見たら、落語家……酪農家……幼児には同じ響きなんだね……。

     

    実は、今、S志のなかで「酪農家さん」ががぜんホットな存在になっているのです。ちょっと前まで、「牛乳は工場でつくってる」発言してたS志もやっと大人になりました。
    きっかけは、前回のブログで書いた「ファーマーズ&キッズフェスタ」。
    ここで、牛に会えたことが大きかったのです。

    フェスタには、2匹の牛も出張してきていたんですね。
    さすがに大きな牛ではなく、小さな牛だったので、子どもたちも怖がらずに集まって、「目がかわいい」「しっぽがかわいい」と大人気でした!

    そんななか、牛乳大好き人間であるS志の関心は、「乳」。
    人だかりでなかなか牛さんに近づけず、「ママー、おっぱい見たい! おっぱい見たい!」と、聞きようによってはアレなセリフを半泣きで叫ぶ姿に、彼の本気を感じました。

    牛小屋では、おじさん(たぶん酪農家さん)が牛に寄り添って、子どもたちは牛のことを聞いたり、なでさせてもらったり。
    乳搾りは残念ながら見られませんでしたが、S志はベストな観察ポジションを見つけ、しゃがみこんで長いことその様子を見つめていました。

     

    帰宅すると、休む間もなく「ねえ」とS志が近づいてきました。

    「S志がうしやるから、ママ、らくのうかさんやってよ」

    子どもは、好きなことを何でも「ごっこ遊び」にする天才です。牛への興奮がこのようなかたちで現れるのは当然のことであります。

    「いいよ。じゃあ、何する?」

    「あのね、ママはS志のおっぱいをしぼって」

    おもむろにS志は四つんばいでスタンバイ(しゃれではありません)。
    さて、ごっこ遊びというのはいろんなテーマで行われますが、男の子がなりたがるキャラには共通のルールがあるようです。
    それは、必殺技があること。
    たとえば救急車には「ピーポー音」、仮面ライダーフォーゼには「アストロスイッチ」、渋いところでは水戸黄門の「ひかえおろー!」も、そういう意味では王道中の王道。必殺技があるから、かっこいい。必殺技がやりたいから、ごっこ遊びが始まるわけです。
    そして、牛の必殺技は「ちちをしぼられる」ことだと認識したようなのでした。ええ、技じゃないんですけども。

    「わかった。じゃあ、乳搾りをするよ。ジャーッジャーッ」

    「はい、じゃあ、S志のぎゅうにゅうのんでいいですよ」

    「ありがとう。ごくごく」

    「……」

    「……」

    「あ、S志、くさをたべるね」

    早々にやることなくなりそうな危険を感じましたが、S志はフェスタでの牛観察の成果を見せ、「草を食べる(採食)」という要素をプラスしてきました。よかったよかった。しばらく、草をもぐもぐ。

    「さっ、おっぱいしぼって」

    「ハイ、ジャーッジャーッ」

    「ママ、S志のぎゅうにゅうのんでいいよ」

    「ありがとう、ごくごく」

    「じゃあ、また、くさをたべるからね」

    (※くり返し)

    3回ほどくり返したでしょうか。
    案の定、飽きてきたらしく、動きが鈍くなってきました。幼児の集中力の短さなめたらあかん。
    S志はふたたび新しい要素をプラスしてきました。

    「うしは、おさんぽにいってくるからね」

    なるほど、放牧か。
    リビングを四つ足でテクテク1周してから(意外と時間かかる)、

    「さっ、おっぱいしぼって」

    (※以下くり返し)

    ……

    この遊び、いつまで続くのかな。
    私はとりあえず乳を搾り続けました。
    「乳しぼる→牛乳飲ませる(酪農家である私に)→草食べる→さんぽ→乳しぼる」というミルティン牛の規則正しき生活を、また5回ほどくり返したでしょうか。

    「うしは、プラレールで遊んだりもできるの」

    もうなんでもありか、牛。
    そのままプラレールに乗り換えるのかと思いきや、S志は電車を走らせる合間に定期的に戻ってきては、

    「さっ、おっぱいしぼって」

    「……」

     

    その後、夕ごはんをつくり始めたキッチンにも入ってきては、流しの前で「さっ、(以下略)」。

    「今、ママ手が放せないんだけど」

    「……じゃあ、じぶんでやるね」

    「えっ」

    「じゃーっじゃーっ」

    拝啓けいこちゃん(ドラマ「北の国から」参照)……ここのうしは、セルフ乳搾りができるようです……。

     

    そんなわけで、牛乳のつくられる課程にはだいぶ理解が深まってきたS志ですが、まだまだ、彼のミルク世界には予想外のブラックホールがありそうです。
    幼児の頭のなかは、すぐ脇道にそれて世界崩壊するのです。
    とくに、回を重ねるにつれ、うしごっこの必殺技が「セルフ乳搾り」になっていることがやや心配な私でした。

レシピ一覧
3月 モー子の桜色ミルクカフェ
2月 ミルコリー野のチーズdeショコラ
1月 ばあちゃんのぽかぽかミルク手当て
12月 サン太のミルククリスマス
11月 イモ子とクリ男のミルクキッチン
10月 ボンジョル野のミルクイタリアン
9月 マイクさんのミルクブランチ
8月 ケンちゃんの夏やすみるくアイス
7月 マサラ田さんの夏カレーセット
6月 コバヤシさんのミルク御膳
5月 陳さんのミルク中華
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