私が子どものとき大好きだった絵本に、『たんじょうびのふしぎなてがみ』というのがあります。
『はらぺこあおむし』で有名な、エリック・カールさんの本です。
主人公のチムが、たんじょう日の前日にふしぎな手紙を見つけるところからお話は始まります。
この絵本は、それぞれのページが、手紙にあるとおりのかたちに切りぬかれていて、1ページめくるたびに、チムと一緒に進んでいけるような気分が味わえます。
わくわく、わくわく。
さいごのページをひらくと、そこには……!
はあー! 思い出すだけで楽しい!
ものすごく好きな絵本だけど、うちにはないのです。
というのも、読み聞かせるのじゃなくて、ひとりで読んでほしい。お母さんといっしょじゃなく、チムと一緒に読んでほしいでゲス! と思っていたので、わが家のミルティンくんことS志が小さいうちは、買いたい気持ちをぐっとこらえていました。
でも、やっとS志もひとりで絵本を読める年になり、来月まさにたんじょう日。いよいよこの本をプレゼントできそうなのですよね〜。
(本人はトミカのハイパーブルーポリスキャリアランナーを執拗にアピールしてますけども)
先週の金曜日、こんなことがありました。
保育園から帰ったら、S志が立ったままリビングのテーブルに向かって何かしています。見ようとすると、
「だめっ。いま、S志のほうみないで!」
と、ぴしゃり。
まあ、いつも「ごはんのおしたくのまえに、ちょっとあそぼ」と言われてだいたい30分くらいトミカで遠足ごっこをするので、私は「しめた」と思い、ハンバーグをつくりはじめました。(ハンバーグって、手間がかかるから子どもと2人きりだとなかなかつくれないんですよね)
材料を合わせて、ぺたぺたと丸くしていると、S志が、そおっと、そおっと、近づいてきた。
こういうときの幼児に声をかけるのはマナー違反です。彼らは気づかれないことに命を賭けています。
私のうしろで、何かごそごそしている。せまいキッチンにS志のぷすーぷすーという急ピッチの鼻息が響きます。そしてそれが静まって……
「ママ……うしろ、みてごらん……」
後ろをふりむいていみると、
置いてあった紙にはこんなことが書かれていました。
へやのどこかにてがみがあるよ
わっ、「たんじょうびのふしぎなてがみ」だあ!
自分でもびっくりなほど、わくわくした子どものころの記憶が一気に蘇ってきました。
「手紙があるの?!」
「うふふ、さがしてごらん」
わあ〜 と探し始めたものの、
S志はリビングとキッチンしか移動してなかったよな(視界に入っていた)。そしてあのごそごそ時間、紙を置くには長すぎる。つまり!
キッチンの作業台のどこかにかくされている!
という事実に、残念ながら0.5秒ほどでたどり着いてしまった。
まずい。こんな瞬殺じゃロマンがない。
というわけで、
「どこだろう〜」トイレを見てみた。
「ここかなあ〜」寝室を見てみた。
「ここだ!」S志の愛車(ミニ自動車)のシートを開けた。
私が探せば探すほど、S志はにこにこうれしそう。そのうち、「あ、そうだ」とつぶやいて、またテーブルで何か書き始めた。
そして、紙を持ってキッチンで手まねきしています。
「ママ! またおてがみだよ!」
ままがいるとこのここ↓にあるよ
ふしぎなてがみの文が増えた!
矢印の指す方向を向いて、S志の視線の先を探してみると……
見つかったのはこれでした。
セロハンテープいっぱいの手作り封筒
入っている紙を出してみると…
まきこへ
ままってかはいい!
しんかんせんいろえんぴつお
くれてありがとう
ありがとう!
「ほら、S志のハートじょうずにできてるでしょ」
S志の鼻息の荒さからは、きっと、ずれないように、かわいい形になるように一生懸命描いただろうことが伝わってきました。
ハートマークって、
こんなにパワフルな愛情表現なんだなあ。
スキャンしてハンコに加工して永年保存したいくらいうれしい。
そういえば、出張のおみやげに、駅で新幹線の形の色鉛筆を買ってあげたんです。そのことですね。
びっくりするやらうれしいやらで、
去年の秋に買ってきたみやげのお礼をなぜ今さら……という疑問もどっか飛んでいきました。
来月、『たんじょうびのふしぎなてがみ』の絵本をあげたら、
S志は同じくらい楽しいるんるん気分になってくれるでしょうか。
そうだ、私も、ふしぎなてがみ書いてみよう!
たんじょう日が楽しみです。