「うそ発見器」。言葉だけでちょっとドキっとしますね。
使いたくないし、使われたくない、
でもでも、使ってみたいような。
私、それを見つけてしまいました。
今ね、持ってます。
これです。
保育園の連絡帳です。
信じられないかもしれませんが、これが、去年からうそ発見機能を持つようになりました。
あっ、もうお気づきかと思いますが、「S志のうそ発見器(保育園在園期間のみ有効)」なんですけどね、ええ。
使い方はこうです。
「S志、今日、保育園でおもらしした?」
「しなかったの。そのぱんつは、あせをかいたからぬれてるの」
「えらい! 先生にも言おう〜。連絡帳に書くね!」
「あ、だめっぜったいだめっ」(連絡帳を隠す)
※いまだにときどきおもらしS志
もともとは、S志が家で話してくれる保育園でのことを、連絡帳に「昨日は家で、こんな話をしてました〜」って書いておりまして(主に書くネタがないときとか)。
するとある日、「れんらくちょうに、かいちゃだめっ」と怒りだした。
それから、私が書いたことをチェックするようになって、「これはだめ」ってペンで10本線くらいで消されたり。
なんだなんだ、検閲か。
あやしかったので、ミルティン検閲があるたび、先生にそれとなく様子を聞いてみたところ、「れんらくちょうにかいちゃだめ」って言うことは、「本当にはできてないこと」というのがわかったのです。
S志の話がうそか本当か、わかっちゃう連絡帳。
ドラえもんの道具みたいな、ちょっとしたのび太気分でありました。
「ねえねえ、S志は宇宙人に会ったことある?」
「うん、あるよ」
「UFOは乗った?」
「うん、のったの。ぶーんて、そらまでいった」
「じゃ連絡帳に書いていい?」
「だめ!」
反応が面白くてつい誘導。ごめん。
さいしょはそんなふうに面白がっていたんですが、
ある日のこと。
保育園から帰ってくると、
「S志ね、きょう、きゅうしょく、いちばんにたべおわったわ〜」
S志は給食食べるのも片づけものんびりで、
先生に「いつも一番最後なんです」と言われていました。
家でも集中して食べるように気をつけていたんですよね。これは、うれしい〜。
「でも、れんらくちょうには、かいちゃだめだから」
「……」
図らずも自供してしまったS志であった。
なーんだ〜
ずっこけながら本人を見ると、いやにキリッとしている。
「だからね、おうちでもさっさとぜんぶたべられるの。みてて」
一生懸命、おみそ汁飲んでおりまして。
それみてたら、あ、そうだ、と思いました。
こういうの、うそじゃないのかも。
今までうそ発見器で捕獲したS志の話を思い返すと、
「おもらししなかったの」(実際はしている)
「ヤギに手でえさあげたの」(実際は小型犬にも半径1メートル内に近づけない)
「かぶとむしを手でつかまえて、じゅえきをのませてあげた」(実際は虫がこわい)
誰かをだます後ろめたいうそとは違うな。
子どものうそって、こうなったらいいな、こうしたいなっていう
キラキラした夢なのかもしれないですね。
それからしばらくして、連絡帳に先生からこんなコメントが。
——S志くん、今日は給食、いちばんに片づけられました。がんばったね。
「れんらくちょうかいちゃだめっ」だったことが、
こんなふうに連絡帳で叶ったりもします。
S志は、「このせんせいのとこ、よんで!」と私に読ませては、何度も見ていました。
それが春ごろの話で、今までしばらくうそ発見器のことは忘れていたんですが。
今、ちょうど保育園では、10月の運動会に向けて練習が始まったところです。
S志の年長さんクラスは、「竹馬」と「さかあがり」という幼児にはハードル高めの種目にチャレンジするそうです。
しかも、「全員成功させる」のが絶対目標! これがかなりプレッシャーです……。
先生によると、今、だいたいの子が竹馬にようやく乗れるようになったところ。
昨日は、「明日からひとりで歩く練習をします」とクラス掲示板に書いてありました。
S志はちゃんと乗れたのかな。
気になって、帰り道に聞いてみた。
「竹馬、どう、乗れた?」
振り返ったS志の目は、キャプテン翼くんのようにキラキラしていました。
「うん、もうね、たったったって、はしったりできるのね。いちばんたかいたけうまで。わあ〜たかい〜っていうの。あと、さかあがりもさってできる。ささーって、できちゃったわ」
「……」
「くるくるくるくる〜ってできちゃったわ」
「……」
意気込みは伝わった。
うん、
連絡帳には、書かないでおくね!