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    男の子のお母さんたちが集まると盛り上がること。
    それが、「男の子あるある」です。
    とくに男の子にありがちな、理解できないナゾ行動。

    「じっとしてない!」
    「しょっちゅう生キズつくってる」
    「話ぜんぜん聞いてない」
    「話のなかみが擬音ばっかり」
    「奇声あげすぎ」
    「すきあらばヘン顔」
    「つまんないギャグほどしつこい」

    「わかるわかる!」
    「ほんと、男の子ってアホだよねえ」

    出るわ出るわ、ネタは尽きず。
    女の子の世界はわからないけど、男子の行動パターンってほんと似てますよね。
    きっと日本じゅうの街角で(世界じゅうでも?)、いつの時代も、男子の母はこれで盛り上がれるんじゃないでしょうか。

     

    わが家のミルティンくんことS志は、「おそとやだ」が口ぐせの超インドア派。赤ちゃんのころから、家での行動範囲はリビングの半径2メートル内という省エネ仕様。生キズをつくることは年1回あるかないかという、石橋を叩いて渡る幼児です。こんな保守的でグローバル社会を生き抜けるのか心配。

    だからちょっと前まで、この、やんちゃ方面の「男の子あるある」はけっこう他人事でした。「もやしっ子あるある」ならスラスラ出てくるわーとか思ってました。

     

    ところが、わがS志も他人事ではなかったのです。

    6歳過ぎたころからでしょうか、
    冒頭のあるあるにぜーんぶチェックが入るようになってきました!

    とくに最近ひどいのが、奇声。

    何が気に入ったんだか「きええっ」という首をしめられたニワトリみたいな声をしょっちゅう出す。しかも白目むいて叫ぶから、本気でこわい。わが子ながら直視できないレベル。

    「きええええっきええええっ」
    「その声やめなさい」
    「きええええっきええええっ」
    「その顔もやめなさい」
    「きええええっきええええっ」
    「怒るよ!」
    「このこえ、すごいよねえ。S志とK太くんしかできないんだよお。きえええっきえええっ」

    ……人の話、ぜんぜん聞いてねえ!

    今は悟りました。
    どんな男子も、遅かれ早かれ、やんちゃになるのね。
    スイッチがオンになるタイミングに個人差があるだけなの。S志はそれが6歳半だったの。
    みんな、今までこんなエンドレス奇声と戦っていたんですか。私は今まで、ぬるま湯育児でした……。うう。

     

    そんな衝撃も覚めやらぬ今日このごろなのですが。
    このあいだの水曜日のことです。

     

    保育園からの連絡帳で、T先生がこんなことを書いてくれていました。

     

    ——今日は保健の先生が、かぜ予防の教室をしてくれました。
    S志くんは、ばい菌についての説明をいっしょうけんめい、
    手伝ってくれていましたよ!

     

    へー、お手伝いしたんだあ。
    でも、ばい菌についての説明ってなんだろう?
    気になって、おふろに入っているとき、聞いてみたのでした。

    「今日、かぜのお話で先生のお手伝いしたんだって? なにをお手伝いしたの?」

    S志はおふろ場の、湯気でくもった壁に、ひとつ目小僧(最近のマイブームらしい)を指で描いていました。得意げにこっちをふり返り、答えるのかと思いきや……

     

    「びよーーーーん」

     

    「……」

     

    「びよよよーーーーん」

     

    あーあ、またアホスイッチが入っちゃったよ。
    瞬時に私は思いました。
    何を思ったのか、満面の笑みで投げキッスしてるし。

    「S志、どうやってお手伝いしたのか教えて」
    「びよーーーーん」

    投げキッスの指を、そのままおふろの壁にびよーんと持って行き、壁につける。
    びよーんと持って行き、壁につける。これをくり返すS志。

    「ねえ」
    「びよーーーーん」
    「おい」
    「びよーーーーん」
    「ストップ」
    「びよよーーーん」

    だんだんイラッとしてきた。

    「人とお話するときは、ふざけないで話そうよ」
    「びよーーーーん」

    投げキッスをもう一度やるS志。
    よーしわかった。叱るぞ。
    今日かぎりで奇声とサラバ!くらいの覚悟で叱るぞ!
    息を吸ったそのとき。

     

    「ねっ、わかった?」

     

    「えっ」

     

    「くしゃみすると、びよーーーんって、ばいきんが5メートルとぶんだよ」

     

    ……

    そうなの?

     

    はっ。もしかしてこれが……

    「今のびよーーんっていうのが、お手伝いしたところなの?」
    「うん。せんせいが持ってるひもをね、びよーーんって引っぱって、ばいきんが、かべまでとぶところをみんなにみせたの」
    「それを今、もう一度やってくれてたわけ」
    「うん。ばいきんがよくわかったでしょ」

     

    そう! アホ男子のハイテンション投げキッスにしか見えなかったあの「びよーん」は、S志が保育園でお手伝いした「ばい菌の説明」を(主語と述語をざっくりはしょって)まじめに再現していただけなのであった!

    S志は私がイラッとしてたことにはまったく気づいてない様子で、「S志、すごくじょうずにできたんだわー」とおふろをチャプチャプ。
    はあはあ。とりあえず、叱らなくてよかったです……。

     

    アホ男子も、まじめなときはまじめなわけで。
    これは、どの男の子もそうですよね。
    うかつにアホ行動と決めつけちゃだめだなあ。
    なんだか、しみじみ反省してしまったできごとでした。

    しかし男の子育児は、どっちみちやっぱり、ナゾが多いです。うう。

     

     

    【まめちしき】
    保育園の保健だよりによると、かぜのばい菌はくしゃみで5メートル、せきで3メートル、話をするだけで1メートル飛ぶそうですヨ。へえ〜へえ〜。

レシピ一覧
3月 モー子の桜色ミルクカフェ
2月 ミルコリー野のチーズdeショコラ
1月 ばあちゃんのぽかぽかミルク手当て
12月 サン太のミルククリスマス
11月 イモ子とクリ男のミルクキッチン
10月 ボンジョル野のミルクイタリアン
9月 マイクさんのミルクブランチ
8月 ケンちゃんの夏やすみるくアイス
7月 マサラ田さんの夏カレーセット
6月 コバヤシさんのミルク御膳
5月 陳さんのミルク中華
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