主婦には、1日に一度、なさねばならぬ使命がある。
そう、夕ごはんです。
保育園から帰ると、私はいつものように冷蔵庫に向かいました。
まずはメインとなる肉・魚から。何があったっけ。パーシャル冷凍室をガラッ。
ガラーン
えっ
えっ(二度見)
そうだ。私はネットで注文できるスーパーの宅配サービスを頼んでいるのですが、今週頼むの忘れてた。ということは?? あわてて野菜室を開けると、おなじくガラーン。冷蔵庫も、ガラーン。あるのはナタデココとか干しぶどうなどの戦力外食材ばかりなり。
けっきょく、まともに使えそうなものはコレダケでありました!
ドラクエでいえば布の服とおなべのふたレベルの装備!
み、皆さんだったらこれで何つくりますか!
私のお料理キャパシティでは、メインおかずがどうしても思いつかず。「冷凍食品」とか思い始めたそのとき、プルルルル……と実家の母から電話がかかってきました。
用事のついでに、この夕ごはん危機を話してみたところ、
「溶けるチーズあるなら、グラタンにすれば?」
「ホワイトソースも生クリームもないよ」
「牛乳あるんでしょ? 牛乳で作れるよ」
なんと、母は牛乳だけでグラタンができるというのです。
ホント? 薄目で疑いつつも、電話口で聞いたレシピはえらくカンタン。
よし、今日は、ミルティンママならぬミルティンおばあ(母)のグラタンに賭けてみようっ。
さてさて、どんなブツができあがったと思いますか?
① まず、グラタン皿にバターを塗んなさい
(ミルティンおばあ談)
「S志やるS志やる!」と、わが家のミルティンくんことS志登場
バターをまず塗るらしいです。バターはひとかけ取ってフォークに刺すと塗りやすかった。塗りきらなかったバターはあとで使うのでとっておきます。
② ツナはマヨネーズと和えたらいいのよ
「マヨのこってりがグラタンのコクになるからね」とのことだったので、マヨネーズ多め。このツナが味のポイントになるので、塩、コショウ多めにして味つけ。
③ 薄切りにしたじゃがいも、小松菜、ツナマヨ、チーズの順に重ねるわけね
じゃがいもは、1ミリ厚くらい。水にさらさずに使います。小松菜は2センチ幅くらいに刻んで、じゃがいもの上にパラパラ。チーズもちぎってパラパラ。
④ じゃが!小松菜!ツナ!チーズ!をさらにくり返す!
最後はじゃがいもで終わるようにし、チーズを乗せて。器に塗った残りのバターもちぎって入れる
⑤ で、牛乳をひたひたになる手前くらいまでジャーッとやるわけ
ドキドキの牛乳イン。「ひたひたになる手前ね」って入れていったらけっこう大量に入っちゃいましたよ(200ccくらい)。大丈夫か、ミルティンおばあ。ちゃんとグラタンになるのか。
なんだか不安になってきました。
そうだ、パン粉を仕上げに散らそう。グラタンといえばパン粉。
……と思ったのですが、パン粉もなかった。
何かほかのもので代用するしかない。パンもないしどうしよう…あっ!
「シケったクラッカー!」(ドラえもん風)
お見苦しい点が多すぎますが、あっという間に準備は万端です!
⑦ 220℃のオーブンで、30分くらい焼けば、もういいと思うよー
焼けた焼けた! 部屋じゅう、なんだか甘いような香ばしいようないい香りです。
うきうきしつつ、さっそく取り分け。どんなかな?
ザバーッ
………こ、これは……
グラタンにあるまじき液状!!
スプーンでグラタン部をザバーッと牛乳から引き揚げる感じは、大海の漁をほうふつとさせました。
母の電話の最後のセリフ「大丈夫、ちゃんとグラタンになっチャウって!」が脳裏でぼやけていきましたが、もはや今さら引けない戦い。よし、開き直るしかない。
「S志! ごはんできたよー」
「きょう、なにごはん?」
「スープグラタンだよ!」
スープカレーがあるならスープグラタンだってあっていい
で、ですね、おそるおそる食べてみたら、
これが、おいしかったんです!!
味つけは、ツナマヨとチーズの塩気だけなのですが、牛乳のうまみのおかげかしっかり濃い味に仕上がっています。牛乳のまろやかさに、じゃがいものほくほくした甘みと小松菜のほろ苦さの相性がすごくいい。
とくに、ミルク・スープが本当においしいです。
ツナとチーズがとろけたうまみに、マヨネーズがコクをプラス。小松菜やじゃがいもからも出汁が出ているのか、複雑で深みのある味です。濃厚なのに後味はさらりとしていて、スープばかり飲んでしまうくらい。
そして、苦しまぎれに放ったパン粉代わりのクラッカーは絶品でした! クラッカー独特の香ばしさと塩気がグラタンの味をきりっと引き締めます。チーズとじゃがいものもちもち感にカリカリした歯ごたえが楽しい。この上のチーズ部分だけでお店開きたいくらいです!
余った小松菜とお豆腐でおみそ汁、あとトマトを切ってサラダにしました。牛乳のおかげで栄養バランスもちょっとアップです!
S志も、
「このぎゅうにゅうはおいしいわ〜、おいもが、ポティトゥみたいだわ〜」
と喜んでいました(一部ナゾな表現)。
いろんな意味でハラハラした夕ご飯づくり。でも、寝る前の歯みがきをする時間まで、部屋に香ばしいいい香りが漂っていて、S志とスーハーしてしあわせ気分を味わえました。
ミルティンおばあ、ありがとう。