ミルティンくん、心臓にわるい歌を歌う
毎日さむいですね。
昨日の朝ポストを見たら、市役所から、わが家のミルティンくんことS志の小学校就学通知書が届いていました。入学説明会と入学式の日時が書かれています。いよいよ、ほんとに小学生。カレンダーに書きこみながら、ちょっとだけ実感が湧いてきました。
と、しみじみしたその夜。
ごはんをつくっていると、いつものようにS志がキッチンに入ってきました。
「ねーママ、きいて! きいて!」
と言ったくせに、何かを思い出すようにうつむいてます。
上から見ると、つむじとほっぺた、その向こうに出っ腹が見える見慣れた眺め。
この幼児体型が、あと2カ月で小学生とはねえ。
しめじを裂きながら遠い目をしていると、S志がぱっと顔をあげて、歌い始めました。
それは、幼児お得意の替え歌でした(メロディは「アルプス一万尺」)。
♪となりのじいちゃんばあちゃん
あまくてへ〜して
だいじなぱんつに穴あけた!
ああ、また保育園で誰かに教わったんだ〜。
満面の笑顔につられて笑っていた私でしたが、この続きで、びっくりしました。
♪ばあちゃんは なぐられ
じいちゃんは じごく
だいじなぱんつは はくぶつかん!
……
えっ!
こんな言葉をS志が嬉しそうに口にしているのが、信じられないきもち。
「えへへ! どうだったあ?」
がんばった折紙を見せるときと同じ顔に、いつもみたいに軽いノリで「なにそれ〜」って言いかけたけど。でも、そうは言えませんでした。
「なぐられるような歌、全然、良くないと思った」
うう。ほめてもらいたくてキラキラしてる目を真顔で見つめるのつらい。
小さくて、まだぷにぷにしてるようなS志に、今の言葉で良かったのかな?
きつすぎなかったかな?
恥ずかしながら叱り下手で今まできてしまった私は、口もとをゆるめたい衝動に襲われました。
でも、ここは私がはっきりしなくては!
「ママは、笑えない」
「……」
「S志、となりのじいちゃんばあちゃんは、それでいいの?」
「……」
S志は笑顔のまま、かたまっています。
ドキドキしたけど、私はとりあえずしめじを裂いて待つ。
10秒くらい経ったでしょうか。
S志が、おもむろに「もういっかいうたう」と近づいてきました。歌ったのはこんな歌でした。
♪となりのじいちゃんばあちゃん
あまくて へ〜して
だいじなぱんつに穴あけた!
♪そ〜〜して としとって
ず〜〜っと としとって
しぜんに おほしに
なりました!
「しぜんに、としとって、おほしになるの
それは いいでしょ?
ママも、 しぜんにとしとって、
おほしになるんでしょ? それは、
いいことでしょ?」
ええっ結局死んじゃうのかよ(パンツに穴あいたまま)! と一瞬ツッコミかけたのですが。
そうか。
いい歌に替えようって考えたんだな。
S志なりにがんばって考えた「となりのじいちゃんばあちゃん」のいちばんいいエンディングが、「自然に年を取って、お星さまになる」ことなんだ。
それは確かに、幸せなことのような。
「うん、それはいいかもね」
「うん!」
かたまってた顔が、いつもの笑顔になりました(お互いに)。
わかってるようでわかってない。わかってないようでわかってる。「幼児以上少年未満」という感じの6歳児の頭の中に、ドキッとさせられたできごとでした。しかしS志の考えたハッピーエンド、深く考えると深すぎるなあ。とりあえず、私はひきつづき、しめじを裂きました(いつまで裂いてんだ)。
「ところで、『あまくてへ〜して』ってなに?」
きのこと小松菜のバター醤油炒め(おいしかったです)を食べながら、気になってたことをきいてみた。
「あのね、だいすきなおさとうをなめていたら、おならがいっぱいでて、だいじなぱんつに穴があいちゃったこと」
「……」
「ハートのかたちのぱんつらしいの」
うむ、その設定も、もうちょっと考え直そうか。