あれからもう7年か……。
妊娠がわかって、区役所に母子手帳を取りに行った日。窓口で、
「この手帳は6歳まで使いますので、
なくさないようにしてくださいね」
と言われ、
「この、おなか(の子)が6歳になるの?
なわけないないない」
思わず、ぷっ、としてしまいました。
いえ、窓口のおねえさんは当たり前のことを言っただけですが、
当時はおなかもぺたんこだし、中身がニンゲンっていう実感がなく。存在感としては「豆」に近かった。豆が6歳になるわけないじゃん。人は思考能力を超える状況になるとつい笑ってしまうらしいですが、ホント想像できなかった。
それがもう、豆も6歳です。
さぐり、さぐりでようやく育児に慣れてきたなあ……って思っていたのですが。
いよいよ春から、新たなる未知が始まります。
そう、「小学校」です。
S志が小学生。
ぷっ。
いやいや、笑ってる場合じゃなくて……
小学校、どんなとこなのかまったくわからない。なにがわからないかもわからない。
わからなくても、小学校にあがる前に、小学生のお父さんお母さんのミッションは始まっちゃいます。準備があれや、これや……。
とくに今、わが家がぶちあたっている課題は、この3つ。
1 「勉強づくえを買う・買わない」
2 「ひとり用ベッドを買うかどうか」
3 「習いごとをどうするか」
なかでも今いちばん紛糾しているのが、1の「勉強づくえ」なのであります。
夫と意見が割れておりまして。年末あたりから、結論の出ないまま論争が続いておりました。
私は、「勉強づくえいらない」派。
夫は、「勉強づくえいる」派。
夫は「つくえは新1年生の必需品」と考えていて、「つくえくらい買ってやりたい。そこケチらなくていいだろう」という意見。
夫の気持ちはわかる。つくえもいつか買うつもり。
でも、今買うと、子ども向きデザインになっちゃう(S志のモチベーション的にも、使い勝手的にも)。それが、無駄な気がしてしまいまして。高さ調整付き学習机は、見ためがちょっと苦手だし。
勉強づくえって、小学1年生に、ほんとうに必要なの?
そこで、まわりの先輩お母さんたちに聞き取り調査をおこなってみたのでした。その結果、9人中5人は、入学と同時に勉強づくえを買っていた。しかしその全員が、
「買わなきゃよかった」
と言っていたのであった!
その理由は……
○証言1 「けっきょくリビングでやるんじゃん」
C田さん(小3のKちゃんの母・6歳の弟あり)
「つくえを買って、6畳間を子ども部屋に。でも、『部屋が寒い』(冬)とか『暑い』(夏)とか言って、けっきょくいつもリビングにいる。宿題も、こっちが面倒みないとなかなかやらないからリビングのちゃぶ台のほうがやりやすいんだよね。個室がほしいって本気で思うのはたぶん高学年からなんじゃないかな? そこから始めても良かったなー」
○証言2「1年生に必要なのはつくえより収納だった」
H川さん(小5のAちゃんの母・ひとりっこ)
「学習机は飽きると思って、長く使えるよう、無垢板のいいつくえにしたんだけど……。小3まではほぼ使わず。先生から戻ってきた宿題プリントの巣に、ランドセルが生息してる感じだったよ……。つくえに向かわせても15分がいいとこ。でも『自分のものを自分で管理させる』のは小1から大切だと思うので、入学のときは収納家具(本棚、タンス、引き出し)に予算を使うのがいいかも」
○証言3「子どもとは、落書きする生きもの」
B場さん(中2のY太くんの母・小5の妹あり)
「高さ調整できる学習机をはりきって購入。でも、小学校高学年ころから、つくえにポケモンを落書きし出して、油性マジックを経て、カッターでの彫刻に至った。シールはがしたあともすごいし、娘へのおさがりも断念して中学入学前に買い換え。中学生になると、塾の宿題とかでわりとまともに使ってる。でもね、男子の机は、天板がガラスのがいいよ、ガラス!」
最初は、「やっぱりそうなんだ〜」と引きぎみだった私でしたが、だんだん、逆に、勉強づくえへの後ろ向きな気持ちがうすまってきました。
子育てって、手さぐり上等。証言をしているときのみんなの表情には、苦さではなく「やりきった感」があったのです。なんか、まぶしい。
そんなこんなで先日、さいごの「勉強づくえ会議」を開催。
私は、リサーチの結果をアツく若干ウザく語りました。「だから、まず収納だけ買おうよ!」。
夫はしずかに聞いていましたが、やがて納得したのでありましょう。
「まあ、つくえは、そういうことでいいわ」
おっ。折れたぞ。そのナナメ下向き視線から、「(M子がアツくて面倒だから)そういうことでいいわ」という(毎度おなじみの)ニオイがかもされていたのは気のせい。うん。
なにはともあれ、いちばん懸念だったミッション1はこれで解決したわけですね! お金もかからないし、ホッとひと安心だわ〜。
とほほ笑んでたところでしたが……
昨日、「レゴ人形のカツラどっちが遠くまで飛ばせるかごっこ」をしていたS志がふと。
「ねえママ、1ねんせいになったらテーブルがいるんだよね」
テーブル? つくえのことか?
「S志も、じぶんのやつかわないとなってパパが」
「……」
「ねえ、S志じぶんのテーブルほしい」
……
そう、夫はサラリーマンの必殺ワザ「根回し」を幼児にくり出していたのであった!
夫のつくえ熱がここまでだったとは。
もう、理由うんぬんじゃなく、「買ってやりたい」んだな。
考えてみると、「学習机はすぐ飽きる」説ってよく聞くのに、買う人はたえない。合理性はさておいた特別なアイテムなんじゃないか。人によっては、正月に鏡もちを買わないと気持ち悪いみたいな感覚なのでは。
うむ、たとえ無駄になろうと、つくえは入学祝いの縁起もの。親の情熱と勇気(勇み足)を称える碑なんだ。そうか、そう考えると納得できる。
なわけない。