ミルティンママとつかのまの夢
幼児ってときどき、すごい殺し文句を発することがありませんか。
メジャーなところでは、「ママのことおなかから見てたよ」などの胎内記憶系や、「大きくなったらパパのおよめさんになるの!」などの泣けるプロポーズ。
お友だちのママは、仕事との両立で悩んでいるときに、「いつもおしごとがんばってるね」と言われて泣いたとか。
あの言葉選びの絶妙なセンスとタイミングは、やはり幼児の特権のような気がします。大人になっても持ち続けてたら、天才営業マンになれるんじゃないだろうか。
昨日のことです。
いつものように保育園にお迎えに行くと、
わが家のミルティンくんことS志がいきなり抱きついてきて、上目づかいでこんなことを言い出しました。
「ママがすきすぎてくるしいの」
えっ。
「すきすぎると、ひとはかなしくなることもあるの」
ええっ。
そのときの背景に効果音を書くとしたら、極太マジックで「ズキューン」としたい。S志がマザコンになったらイヤだなと思っていた私ですが、そのとなりに「マザコン上等!」と書き加えてもいい気がする。
不思議なことに親バカモードが脳内で発動すると、本当に子どもがめちゃめちゃかわいく見えるんですよね。S志は、まさにこのような感じに見えました。
(脳内イメージです)
※以下、M子脳内イメージ像とともにお読みください
さて、ウキウキ気分で手をつないで家に帰り、まずはいつものように牛乳をゴクゴク。
「やっぱり、さけはうまい」
うんうん。ミルティンくんだもんね。
いつもなら「へー」で済ませる不可解なセリフにも素直にほほえんでしまう。
「きょうのごはん、なーに」
「今日は、肉じゃがだよ」
「えーにくじゃがなの。えびふらいがいい」
「エビフライは無理だよ。もうじゃがいもさんとにんじんさんが
おいしくなる準備してるからさあ〜」
(注:親バカ発動中は夢見がちになってしまうことをお許しください)
「やだ。えびふらいじゃなきゃやだ」
ん? 今なんか一瞬ふてぶてしく見えたわ。
イラッとしそうになりましたが、まあ、たまにはあるよ、わがまま言いたいとき。
なんとか肉じゃがを食べさせ、洗い物を終えてひと息ついていると、S志が怪獣図鑑を持って、近づいてきました。
「うるとらまんごっこしようよ」
最近めちゃくちゃハマッてるようでして、ウルトラマン。
いつもなら「パパとやりなよ」と断るところだけど、今日はやってみようかな。
「いいよ! じゃ、ママはバルタン星人をやるよ!」
「だめ! ばるたんせいじんだめ!」
「えっ。じゃ、三面怪人ダダ」
「だめ」
「地底怪獣グドン」
「だめ。ママは、バドせいじん」
「えっ」
↑「バド星人」(「ウルトラセブン」に登場)
バド星人のビジュアルにテンションがガタ落ちしそうになりましたが、いやいや、ここはかわいいS志のため。つとめて明るくウルトラマンとの戦いに臨むことにしました。
とはいえ、バド星人見たことないし。とりあえず図鑑に載ってたポーズすればいいのか。
まごつく私に、S志はだんだんイラついてきたようでした。
「バドせいじんはそんなうごきじゃない」
「もっとくるくるまわるの!」
「どうしてできない!」
あれ? 私、なんでこんな怒られてんの?(しかもへんなポーズで)
「もうお風呂の時間だし、終わろうよ」
そう切り出すと、S志はガッと立ち上がり、
「おとななら、ちゃんとやりなよっ!!!」
……
はっ!!
り、理不尽っ!!
この瞬間、親バカ脳から我に返ったのであります。
S志はこのあとも理不尽全開で、アレしてコレしての大騒ぎ。
ビシバシ叱って諭して、やっとふとんに入れたころには、もうヘトヘトでした。
もしやS志は、私が発していた「今ならなんでも許しちゃう空気」(親バカモード)を察していたのでは?
幼児が親をキュンとさせる殺し文句って、こうして親バカを発動させて、我を通すための本能なのかもしれません。幼児のサバイバル能力おそるべし。
はあ。なにはともあれ、寝息をたてる顔はやっぱり、ミルティンくんだネ!(発動しました)。